エレベーター1基あたり何戸?──湾岸タワマン20物件 EV混雑度ランキング

目次

エレベーターの「基数」が暮らしを左右する理由

タワーマンションのエレベーターを語るとき、速度だけに注目しがちです。しかし毎朝の通勤ラッシュで実際に体感する「待ち時間」は、速度よりも「1基あたりの住戸数」によって左右される場面が多くあります。いくら分速300mの高速エレベーターでも、1基に100戸以上の住民が集中すれば、乗りたいときに乗れない状況が生まれます。業界では1基あたり50戸以下が理想とされており、80戸を超えると混雑を実感し始めるといわれています。100戸を超えると朝のピーク時に複数回待ちが発生するケースも報告されています。

前回の記事(エレベーターで選ぶタワマン──湾岸20物件 最速選手権&都心ハイクラス徹底比較)では、湾岸20物件の最高速度をランキングしました。今回はその続編として、「1基あたり住戸数」という切り口から混雑リスクを可視化します。居住用乗用エレベーターのみを集計対象とし、非常用・自転車用・荷物用・店舗用はすべて除外しています。

湾岸タワマン EV1基あたり住戸数ランキング

以下の表は、1基あたり住戸数が少ない順(混雑しにくい順)に並べています。居住用EV基数は公開情報に基づく参考値です。

順位 物件名 エリア 総戸数 居住用EV 1基あたり戸数 階数 竣工年
1 ザ・トーキョータワーズ 勝どき 1,981戸 33基 60.0戸/基 58F 2008
2 ブランズタワー豊洲 豊洲 1,152戸 16基 72.0戸/基 48F 2021
3 シティタワーズ豊洲 ザ・ツイン 豊洲 1,063戸 12基 88.6戸/基 48F 2009
4 パークタワー晴海 晴海 1,076戸 12基 89.7戸/基 48F 2019
5 ブリリアマーレ有明 有明 1,085戸 12基 90.4戸/基 33F 2008
6 ドゥ・トゥール 晴海 1,450戸 16基 90.6戸/基 52F 2015
7 HARUMI FLAG SKY DUO 晴海 1,455戸 16基 90.9戸/基 50F 2025
8 スカイズ タワー&ガーデン 豊洲 1,110戸 12基 92.5戸/基 44F 2014
9 パークタワー東雲 東雲 585戸 6基 97.5戸/基 43F 2014
10 ブリリア有明スカイタワー 有明 1,089戸 11基 99.0戸/基 33F 2011
11 芝浦アイランド グローヴタワー 芝浦 833戸 8基 104.1戸/基 49F 2007
12 グランドシティタワー月島 月島 1,285戸 12基 107.1戸/基 58F 2026予定
13 ザ・パークハウス 晴海タワーズ ティアロレジデンス 晴海 861戸 8基 107.6戸/基 49F 2016
14 ザ・パークハウス 晴海タワーズ クロノレジデンス 晴海 883戸 8基 110.4戸/基 49F 2013
15 パークタワー勝どきサウス 勝どき 1,665戸 15基 111.0戸/基 58F 2023
16 勝どき ザ・タワー 勝どき 1,420戸 12基 118.3戸/基 53F 2016
17 セントラルガーデン月島 ザ タワー 月島 744戸 6基 124.0戸/基 48F 2028予定
18 パークタワー勝どきミッド 勝どき 1,121戸 9基 124.6戸/基 45F 2023
19 シティタワーズ東京ベイ 有明 1,539戸 12基 128.3戸/基 33F 2019
20 ザ 豊海タワー マリン&スカイ 豊海 2,046戸 24基(各棟12基×2棟) 85.3戸/基 53F 2026予定

※居住用乗用エレベーターのみカウント。非常用・自転車用・荷物用・店舗用は除外。ザ・トーキョータワーズは賃貸813戸を除く分譲1,981戸で算出。

データから見える「混雑リスク」の実態

まず率直に言えば、業界の理想とされる1基あたり50戸以下を達成している物件は、このランキングに登場する20物件の中に一つもありません。タワーマンションという建物類型の特性上、大量の住戸を少ない敷地に集約するため、1基あたり100戸前後が現実的な「標準値」となっています。その中でどれだけ基数を確保しているかが、デベロッパーの設計思想の差として現れます。

ランキング2位のブランズタワー豊洲(72.0戸/基)は、このランキングにおける実質的な最良水準です。1,152戸という規模に対して居住用EV16基を確保しており、湾岸エリアでは最多クラスの設置率となっています。低層階向けと高層階向けを分離したデュアルゾーニングが分散効果を生んでいます。東急不動産がこの物件で見せた設計思想は、EV快適性という観点で他物件の追随を許さないレベルといえます。

一方、合計数字で首位に立つザ・トーキョータワーズ(60.0戸/基)には、見落としてはならないカラクリがあります。ミッドタワーとシータワーの2棟合算でEV33基という湾岸最多の基数を誇りますが、棟ごとに分けると様相が変わります。ミッドタワーは17基に対して約648戸で1基あたり約38.1戸と非常に余裕がある一方、シータワーは16基に対して約1,333戸で1基あたり約83.3戸と、ランキング中位と変わらない水準になります。購入・賃貸いずれの場合も、どちらの棟を選ぶかで日常の体感は大きく異なります。物件名だけで判断せず、棟ごとのスペックを確認することが不可欠です。

ザ 豊海タワー マリン&スカイは東西2棟合計2,046戸という湾岸最大規模の物件ですが、各棟に乗用EV12基ずつ、合計24基を備えています。1基あたり85.3戸という水準は、ランキング中位に位置します。前回の速度ランキングでも最高速度150 m/minと下位に位置しており、速度・基数の両面で課題が重なっています。ただし、豊海という立地が持つ商業施設直結や将来の再開発余地など、EV以外の生活利便性とのトレードオフとして評価すべき側面もあります。第4期以降の購入を検討している方は、この数字を購入判断の材料として必ず織り込んでおくべきでしょう。

隣接して建つパークタワー勝どきサウス(111.0戸/基)とパークタワー勝どきミッド(124.6戸/基)の比較も、購入検討者にとって重要なデータです。同一デベロッパーが手がけた姉妹物件でありながら、サウスはEV15基、ミッドは9基と基数に大きな差があります。その結果、1基あたり住戸数には約13.6戸の開きが生じています。前回記事では速度においてもサウス(210 m/min)がミッド(180 m/min)を上回ることを示しました。分譲価格の差は速度と基数の両方を反映した結果であり、「同じエリアの同じデベロッパー」という括りで比較するのは危険です。

前回記事で速度ランキング1位を獲得したセントラルガーデン月島 ザ タワー(124.0戸/基)は、このランキングでは17位に落ちます。分速300mという湾岸最速の高速EVを備えているものの、居住用基数はわずか6基です。速度が速ければ1基あたりの輸送回転数が上がり、同じ戸数でも実質的な待ち時間は短縮されます。しかし6基・124戸/基という数字を300 m/minの速度がどれだけ補えるか、定量的な評価はまだ行っていません。次回記事で試算する「EV負荷指数」では、速度と基数を統合した総合評価を行います。速度が速くても基数が少ない物件と、速度は中程度でも基数が多い物件、どちらが実際に快適かを数値で明らかにします。

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まとめ──速度だけでは見えない「本当の快適度」

1基あたり住戸数は、内覧では決して見えない隠れた重要指標です。モデルルームやパンフレットにはEVの総基数が記載されることはあっても、「1基あたり何戸を担当するか」という視点での説明はほとんどありません。この数字を自分で確認し、速度と合わせて評価する習慣を持つだけで、マンション選びの精度は大きく変わります。

次回は、今回のランキングと前回の速度ランキングを統合した「EV負荷指数ランキング」をお届けします。負荷指数は(1基あたり住戸数 ÷ 最高速度)× 100 で算出し、数値が小さいほど快適という指標です。速度1位・基数下位のセントラルガーデン月島 ザ タワーと、基数上位・速度中位のブランズタワー豊洲が総合でどう評価されるか、ぜひ次回をお楽しみに。


データ出典:wangan-mansion.jp(物件番号:50, 34, 29, 27, 33, 28, 11, 12, 68, 136, 137, 64, 63, 61)、skyscraperclub.com(物件ID:4510, 5276, 5277, 4395, 6656, 4965, 4966, 4967, 9667, 9672)、manmani.net(晴海フラッグ スカイデュオ・セントラルガーデン月島レポート)、各物件の新築時パンフレット・重要事項説明書。居住用EV基数は公開情報に基づく参考値であり、実際の設置内容と異なる場合があります。

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この記事を書いた人

2015年に新築で晴海のタワーマンションを5,500万円で購入し、2025年に1.4億円で売却(売却益+8,500万円)。現在は都内の中古タワマンに住み替え、資産性の高い物件選びと住宅ローン戦略を実践中。「住みながら資産を増やす」をテーマに、後悔しないタワマン購入術や、管理組合・修繕積立金の実情など、タワマン住人ならではのリアルな情報を発信しています。

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